| インプラント
 ◆ インプラントの条件
『インプラントどうなんですか?』最近良く聞く言葉です。私の歯科医院ではインプラント植立は現在行っておりません。
 インプラントが普及して治療成績が目を見張るほど向上しました。
 患者さんに時々聞かれます。
 「先生は、ないごてインプラントをせんとな?」
 これに対する答えは後回しにすることにして、現在のインプラントの実態と私の意見を述べたいと思います。
 インプラントをしてみようかなとお考えの皆様に参考になれば幸いです。
 まず、私はインプラント推進派です。条件の整った方で、インプラントをご希望の方にはどんどんお勧めしています。
 
条件の整った方が、立派な先生の指導の元にインプラントを植立され、
 その後見事に管理されているインプラントとその上部補綴物は
 『歯科医療が生み出した芸術品』
 といえるでしょう。
 
 先代院長の父はもう30年以上前からインプラントに興味を持ち、私が歯科医になる頃には相当沢山のインプラント材料や手術に必要な器具を集めておりました。父の夢は息子である私と一緒に沢山の患者さんにインプラント手術をする事だったろうと思います。
 私が歯科医になって鹿児島大学の歯学部第一口腔外科で修行をしていた頃、盛んにインプラント手術が行われておりました。
 当時、新米の私は、教授が手術をしている時、写真係りを務めたり、手術所見の記録などを行いながら、将来の夢に向かって毎日勉強しておりました。
 懐かしい若い頃の思い出です。
 ■インプラントに対する評価
インプラントの評価の基準
 インプラントにおける評価は、インプラント植立後10年で、そのインプラントが口腔内でちゃんと機能しているかが一つの目安になります。
 現在、10年目の評価で成功率は94%から95%程度の様です。
 
ただし、この数字は大学病院と同程度の設備を備えた歯科医院で、
 良く勉強された先生が丁寧な検査を行い、
 治療の適応であると考えられた患者さんが手術を受け、
 その後患者さんが主治医の指示通りに毎日の管理を怠らずに
 行っている状態での数字と考えて下さい。
 
 この数字通りに解釈すると、100本のインプラント手術が行われた場合、比較的早期にインプラント材料と患者さんの相性が悪く、その結果生着しなかった症例が1~2例、その後のお口の中の状態の変化に伴い、次第にインプラントに不都合がおこり、摘出しなくてはならなかった症例と偶発事故にてインプラントに過大な力が加わって摘出しなくてはならなかった症例が3~4例程度と考えて良いと思います。素晴らしい数値だと思います。
 現在世界中でインプラントの材料は約400種類、日本国内で約200種類程度使用されていると言われています。この広い材料の選択肢が成功率を高くしている理由のひとつでしょう。
 ■インプラント治療を受けるために必要な条件
インプラント成功の最低条件
 さて、皆様がインプラント手術を受けようとする場合に良く考えなくてはならない事を述べてみましょう。
 
最も重要なことインプラントの障害となる全身疾患の管理はきちんと行っていきますか?
 
 血糖値のコントロールは重要です。糖尿病がある場合には、その程度によっては手術がむずかしいこともあります。血糖値が安定しない場合にはインプラント植立はかなり困難であると考えて下さい。他の全身疾患として、腎臓疾患、肝臓疾患、ぜんそくなどの呼吸器系疾患、心臓病などの循環器系疾患などが挙げられます。
 要注意なのは『高血圧』です。高血圧の背後には色々な疾患(心臓・腎臓・肝臓疾患)が潜んでいる場合があります。必要な検査は内科の主治医の指示で十分に行って下さい。
 最終的には、主治医の先生の意見を参考にして判断することになりますが、人生は長いものです。
 ●インプラントは人工物である事を理解できますか? 
インプラントは入れ歯やブリッジと同じ人工物です。神様が創って人間に与えて下さったものではありません。
 
	
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 半知半能の人間が人間のために、研究して作り上げたものです。基本的に『一生使えるもの』でない場合もあるのです。
 皆さんは、人間の歯や顎はいつも一定の位置にあると勘違いしている事が多いようです。
 しかし、人間の顎や歯は、絶えずその位置を変えては、また元の位置に戻り、あたかも一定の場所にじっとしているように見えるだけです。
 歯も下顎も絶えず動き回っていて、昨日の位置と今日の位置が違う事がしばしばあります。
 元に戻る場合もありますし、新しい位置を求めて移動して、新しい状態で落ち着く事もあります。
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 『若い頃は顎がほっそりとした顔立ちだったのに、いつのまにか丸顔に近くなった。』なんて言う事は良くある事です。『単にほっぺたにお肉がついただけ。』という場合もあるかもしれませんが、ほとんどの場合には歯牙の移動、下顎の移動が起こった結果である事が多いのです。
 こういった変化に対しては神様が創って人間に与えてくださった『歯牙』はちゃんと適応して、移動・傾斜・挺出(伸びだす事)・圧下(歯が顎の骨の中に入り込んでゆく事)等を起こし、その時の状況にちゃんと対応できるのです。
 『人工物』は神様が創った物のように器用に立ち回れない場合があります。
 ●ていねいな歯磨きを毎日きちんと行っていますか? 
 丁寧な歯磨きは、インプラントに限らず、健康な方でも必ず毎日行って頂かないと困ります。
 
まず、「自分は歯磨きをせずに寝る事がある。」
 といった方はインプラント手術は受けない方が無難でしょう。
 ●歯周病があるといわれた事がありますか? 
 これは、歯磨きと密接な関連がありますが、歯磨き不足で歯槽膿漏(歯周炎)を起こしているような方もインプラント手術は受けない方が無難でしょう。失った歯を修復する方法は他にもたくさんあります。
 ●はぎしり・かみしめを自覚していたり、顎関節症があるといわれた事がありますか? 
 このような状態でインプラント手術を受けるのは、わざわざお金をドブに捨てに行くに等しい愚行です。10年後の成功率を下げる事になりますので、インプラント手術は、まず、はぎしり・かみしめ・顎関節症を治療した後に受けて下さい。
 では、何故このような状態でインプラント手術を受けると、都合が悪いのでしょうか?
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