山形屋歯科 坂上医院
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口臭治療


私は歯科医ですので、当たり前の事ですが、毎日患者さんのお口の中を診ています。

◆ 不思議な経験

 日々の診療の中で、うまく表現出来ないのですが、お口の中を拝見した時、
  『元気のあるお口』 『生き生きとしたお口』
 と
  『元気のないお口』 『なんだか可愛そうな雰囲気のお口』
という感覚を覚える事があります。
 別に『虫歯だらけ』だとか『シソーノーローで歯茎ブヨブヨ』という訳ではありません。
 ただ、なんとなくそう感じるのです。当然後者の方に口臭が多いのは確かです。

 たまたま、この『元気のないお口』『なんだか可愛そうな雰囲気のお口』の患者さんに、顎関節症顎関節症のページ参照)があり、この治療を行なう事があります。
 すると、だんだんお口の中の雰囲気が変わり治療が終わる頃(約半年後)には、いつのまにか『元気のあるお口』『生き生きとしたお口』に変わってしまいます。
 始めの頃、少し気になっていた口臭も全く感じなくなっています。
 別に、特に『口臭』に気を配って指導を行った訳でもないのに、ただ顎関節症の治療をしただけで、私が気にしていた口臭が無くなってしまうのです。

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 何故なのか、はっきりした証拠を示すことは出来ませんが、『口臭治療』の中に、噛みあわせに関与する筋肉のトレーニングというのを見た事があります。
 私は、こんな指導をしても、結局長続きせず途中で挫折するだろうと考えで、このたぐいの指導は全く行っていません。
 どのような内容かは詳しく覚えてさえいませんが、確か『噛み合せに関与する筋肉群を計画的にトレーニングする』事が大切だという事だったと思います。
 『これにより、咀嚼に関与する筋肉が強化され、食事の際に噛む回数噛む力が増え、唾液の分泌を促し、舌苔の付着が防止され、口臭防止に大きな効果がある。』という事で、トレーニング法が細かく図解してあったのをかすかに記憶しております。

■顎関節症と口臭

 しかし、どうやらこの事は顎関節症の治療と関連がありそうです。
 顎関節症の患者さんには、『顎関節症の治療のページ』に詳しく述べましたが、『下顎が後方に移動し、しかも上方に引き上げられている、いわゆる「下顎の後上方転位」という状態』があります。

 このような患者さんは、食事の際に奥歯で食べ物を丁寧に噛み砕き・磨り潰すという動作をほとんど行いません
 糸切り歯の付近で適当に噛み砕いて直ぐに飲み込んでしまいます。
 言い換えると『顎関節症の患者さんは、お口の中に運んだ食べ物が、奥歯の方に行きにくい状態になっている。』と言う事が出来ます。
 顎関節症の治療をおこなう過程で、『臼歯の噛み合せを高くする』という時期があります。
 こうすると、人間には口の中で噛み合せが最も高い所で噛もうとする性質がありますので、自然と食べ物を奥歯の方に送り、一生懸命噛む努力をなさいます。

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 しかも、噛み合せを高くする材料はインスタントのプラスチック(レジン)です。
 下顎が移動を始めた時に、インスタントのプラスチックでそれなりの噛み合せる面を再現してある事になります。下顎が新しく落ち着く位置を模索している最中には、きちんとした噛み合せになりません
 そのため、患者さんは時間をかけて、耐えがたきを耐え、忍びがたきを忍んで、難行苦行しながら食べ物を奥歯でせっせと噛み砕く動作を行なっている事になります。
 しかも、噛み合せを高くしながら、左右の噛み合せに関係する筋肉のバランスを整えるために必要な期間は約2ヶ月から3ヶ月に及びます。
 「下顎の後上方転位」という状態の時には、特定の筋肉が無理をして働き、ある筋肉は楽をして少ししか働かないという状態になっています。
 これを、奥歯の噛み合せを高くする事により、噛み合せに関係する筋肉が、本来のあるべき状態に強制的に戻され、それぞれの筋肉が協力し合って一丸となって『食べ物を噛む』という動作に従事することになります。

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 その結果、顎関節症が治癒したと思われる時期に、患者さんに聞いてみますと、必ず
 『食べ物を力強く噛むことが出来るようになった。』
 『いままで、無意識の内に避けていた硬い食べ物が楽に食べられる様になった。』
 『噛む事に何の不自由もなくなった。』

 と異口同音に感想を述べられます。
 これは、意図せずに噛み合せに関係する筋肉をトレーニングして強化した結果であるとしか考えられません。
 勿論、それなりに歯磨きも頑張られた事とは思いますが、来院後に歯磨きに関しては、何の指導も行なっていません。

 しかし、まさに、この時期に、治療を始める前になんとなく気になっていた『口臭』は消失してしまい、お口の中もいつのまにか『元気のないお口』『なんだか可愛そうな雰囲気のお口』から『元気のあるお口』『生き生きとしたお口』という印象に激変しているのです。
 私はひょっとしたら、顎関節症の患者さんに、意図せずに『口臭治療の筋肉トレーニング』を強制的に行なわせ、噛み合せに関係する筋肉を鍛え上げ、人間が本来あるべき筋肉の状態を作り上げ、お口を『健康』な状態に誘導しているのかもしれません。
 『口臭がなくなる事』『お口の中が総合的に健康な状態になる事』であるという気がする今日この頃です。

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